昭和30年といえば、リアリズム写真全盛の時代であったが、私もそのような風潮に巻き込まれ、日光の二社一寺に来訪する内外の観光客を格好の被写体とし、スナップ写真明け暮れた。カラーフィルムがようやく普及し始めたのも、その頃からであり、改めて日光の二社一寺の建造物の美しさを再認識させられたものであるが、このことはますます日光通いを崇じさせた。
 私と足立氏との親交のはじまりもその頃であり、ある日大猷院の山門付近フッと言葉を交わしたカメラマンその人であった。それ以来、友人として親交を深めてきた仲である。
 その足立氏のこの度の写真集は、日光の歴史と、それにまつわる日光の美しさを表現した処女出版である。が、有名なカメラマンでもなかなか撮りきれない「人の心を打つ写真」を、アマチュアカメラマンが、三○年の歳月をかけて苦心して撮影した作品を発表することはまさに青天の霹靂である。
 この事を氏の口から直接聞いたとき、おもわず“ヤッター”と快心の笑みを顔面一杯に溢れさせ「お目出度う…」と云うだけが精一杯であった。アマチュアカメラマンであれば、その心境を理解していただける事であろう。

 今回の処女出版は、足立家にとって生涯忘れられない事柄の集大成である。それは、氏の輪王寺三○年の勤続、愛妻の愛子夫人との苦楽二五年目の銀婚式、長男誠君の宇都宮大学卒業と就職、長女富美子さんの成人式と、どれをとっても人生の良い意味での節目である。このことは、愛妻の内助の功があった故ならではの事である。
 氏は、真に日光を愛し、その良さを全国に広めるための多くの労をいとわない。市政功労者として受賞もしているが、そのような素振りも見せず、常に心を開いて人に接する。凡人にはなかなか出来ることではない。
 このような友人を得た私は、幸せ者である。今後ともいっそうの精進と発展を期待してやまない。

(いなみ としひこ 写友 宇都宮市)



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