発刊を称えて



 郷土愛に燃えて、周辺の自然や文化的遺産、郷土芸能、庶民の生活を記録する写真家が全国に増えている傾向は歓ぶべきことである。特にアマチュアが長い歳月をかけて、その結実を写真集にまとめて、それが貴重な記録となって後生に残るという現象が、近年とみに著しい。
 プロフェッショナルの受注生産と僅か質を異にしていて、その表現技巧に稚拙さがあったとしても、内容の追求はむしろ深遠で説得性において素人のほうが優れるような気がする。
 写真雑誌におけるジャーナリズムが志向する屈折のある写真表現が時代に脚光を浴び、寵児的写真家が輩出するのだが、その過半数は写真本来の単純素朴な伝達性から離れて、愁眉の渕に停滞する傾向がある。
 足立さんは50年にわたる日光土着の人で、然も輪王寺に籍を置いていて、その郷土愛を写真という媒体を通し発表し続けた人である。その業績を1本にまとめて世人の目に晒した時、誰もが日光周辺の総てを作品群から学びとることができると思う。
 なにはともあれ、日光30年の軌跡をこのような形でまとめた足立さんの情熱に、敬意を表したいと思う。

(あきやま しょうたろう 写真家)


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